Pickup Team 京都産業大、笑顔と涙の2024シーズン最終章「得点がすべて4年生だったのは、本当に彼らの1年間の努力が報われた瞬間かなと思います」

今季から大会方式が大きく変わったインカレ。予選ラウンドプレーオフに勝利すれば決勝ラウンドへと進み、これまでと同様に頂点を目指す戦いに挑むが、敗れたチームは強化ラウンドで切磋琢磨することになる。

日本一を目指すのとは違う強化ラウンドへどのように臨むのか、昨年のインカレ準優勝校・京都産業大もモチベーションや編成など難しい決断を迫られたチームのひとつだ。

追加点を決めて吠える主将の菅野

強化ラウンドへの出場が決まった直後は、選手たちも思いが揺れていた。プレーオフ翌日の練習試合では「みんなメンタル的な部分でちょっと難しいかなっていうか、このメンバーで戦っていいんかなって」と迷いがあったと主将・菅野翔斗(4年/サンフレッチェ広島F.Cユース)は振り返る。学生たちのその心を感じていた吉川拓也監督は、「4回生に相談するよりも、こちらがしっかりと方向性を示そう」と決意し、「このインカレで17位になろう」と目標を定めた。選手たちもこの方針を受け入れて気持ちを固め、強化ラウンドを勝ち上がるための準備を怠らなかった。

京産大は5年後、10年後に目線を据えてチームとして歴史を重ねていっている最中だが、「そのためにはやっぱり関西のレベルを上げていくことが大切。今年も一年間、関西のあらゆるチームに鍛えてもらった。インカレの一枠を取ることが関西全体のレベルアップにつながる」と吉川監督は関西代表として京産大が果たすべき責任も背負って強化ラウンドの戦いへと臨んだ。

先制点を決め、笑顔を見せるFW中田樹音

グループリーグは初戦の東京国際大を菅野の2ゴールで退けると、続く札幌大にも1-0で勝利。しかし、最終節の新潟経営大戦はプランどおりにゲームを運びながら、後半途中から相手の勢いを止められず逆転されてしまう。敗れた場合、ノックアウトステージ進出は東国大の結果次第となるという状況の中、ラストプレーで菅野の折り返しをMF田中寿宗(3年/東山高)がヘディングで決めて同点とし、自力で準決勝への切符を手にした。

準決勝以降は「内容以上に結果を掴もう」と相手の流れの時間帯に我慢することを全員が認識しながらゲームをしっかりコントロール。力ある選手が揃う中央大相手の決勝戦では、相手の先手を取るサッカーで快勝し目標を達成した。今年は関西選手権、リーグ戦、総理大臣杯とあと一歩が届かなかった京産大だったが、強化ラウンドという舞台ではあるが目指してきた地点へたどり着いたのは「来シーズンに繋がる大きなアドバンテージになる」と吉川監督も胸を張る。

吉川監督が”強豪校になるためのフェーズに入っていく、避けては通れない道”とする今季は、昨年のリーグ優勝校として他チームから受けるプレッシャーもこれまで以上の厳しさとなった。シーズン初めに「4年生のパワーが足りない」とスタッフから指摘を受けた最上級生たちは、深夜までミーティングを重ねて試行錯誤しながらも、ピッチ内外でチームのために献身してきた。そうやって真面目にひたむきに取り組んできた今年の4年生がいたからこそ、難しい状況の中でも強化ラウンドの5試合をやりきった。

ゴールを決めて、吉川監督と抱き合う岩村匠馬

決勝では、出場した4年生FW全員がゴール。「3人が点を取って勝ちきれたのは、日ごろから積み上げてきたものが出せたかな」と菅野も誇らしげに話す。3点目を決めた岩村匠馬(4年/東山高)は、常にスタメンで出られていたわけではない。それでも「このチームのために何ができるかっていうのを常に考えてた」と言う岩村のゴールは、彼が毎日取り組んできた努力を見ていた仲間たちの胸を熱くさせる価値あるものだった。

「選手だけじゃなく、マネージャーや主務、トレーナーも含めて4年生全員の力を結集して、この1年間走りきれた。得点がすべて4年生だったのは、本当に彼らの1年間の努力が報われた瞬間かなと思います」と吉川監督が語ったように、4年生が作り上げてきたチームの集大成にふさわしい戦いで、京都産業大サッカー部は2024シーズンを締めくくった。

笑顔と涙でラストマッチを締めくくった
蟹江 恭代

関西を中心に、大学サッカーの写真を撮ったり、記事を書いたりしています。

蟹江 恭代をフォローする
タイトルとURLをコピーしました